放射冷却
物体を冷却するためには、通常は電気エネルギーが必要です。しかし、電気を使わずに物体の冷却が可能となれば、エネルギーを節約できます。さらに温度差を電気に変換する素子を使って新たなエネルギーを生み出す手段も確立できます。
物体から温度に応じた電磁波が放射されています。これを黒体放射といいます。この電磁波は広いスペクトル幅を持ちますが、室温では波長10μm付近の赤外領域にピークを持っています。つまり、すべての物体(人も)は黒体放射により熱を失っているのですが、周辺からの黒体放射を吸収して平衡状態となるため、普通は冷却されません。
地上から宇宙へ黒体放射すれば物体はエネルギーを失い冷却されます。これを放射冷却と呼びます。よく晴れた冬の朝の冷え込みが厳しいのはこのためです。そして、放射冷却は冬の朝だけでなく、夏でも昼でも夜でも起こります。
効率的な放射冷却には、それに適した光学的な特性を持つ材料が必要です。具体的には、「大気の窓」と呼ばれる大気の透過率が高い波長領域に強い放射率を持つこと、それ以外の波長領域では放射率が小さいことです。さらに、太陽の光のもとでは、太陽光の波長領域の光を吸収せずに高い反射率や透過率を持つことが必要です。私たちの研究室では、これらの特性をもつ高分子材料やメタマテリアルの研究を行っています。
さらに、放射冷却により生じる温度差を利用した環境発電素子の開発も行っており、高い発電効率が得られました。この素子は夜間に発電を行えるという特徴があります。

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