研究概要
私達の研究室では、金属ナノ構造の光物性の研究やそれを利用した光デバイスの開発を行っています。
金属のナノ構造は、半導体や高分子などの他の材料では実現できない興味深い光学的な性質を持っています。
例えば、金のナノ微粒子は金でありながら赤やオレンジ色をしており、古くから教会のステンドグラスの色材などに用
いられてきました。これは、金属中の自由電子が光と相互作用を起こすために生じる現象で、局在表面プラズモン共鳴(localized surface
plasmon resonance: LPR)と呼ばれ、金属のナノ微粒子の他、荒い金属表面などで起こる現象です。ちょうど音が音叉と共鳴するように光が微粒子と共鳴を起こすことに似ています。共鳴条件は微粒子の近傍の屈折率より敏感に変化するため、化学センサやバイオセンサに応用することができます。また、共鳴時には、ナノ構造近傍に大きな光電場が発生するため巨大非線形光学効果や表面増強ラマン散乱(surface
enhanced Raman Scattering: SERS)などへの応用が盛んに行われています。私達の研究室では、LPRを用いた光デバイスの開発を行っています。その中には、光ファイバ型バイオセンサやバイオチップ、電気光学効果を使った非接触電場検出センサなどがあります。また、表面プラズモンの新しい励起方法やその機構の解明なども行っており、プラズモニック結晶(金属表面に光の波長程度の周期構造を作った材料)や光アンテナ(光の波長サイズのアンテナ)の研究を行っております。
これらの表面プラズモン構造は、光学材料の新しいパラダイムを作ると考えています。表面プラズモンの研究は非常に学際的であり、その研究には我々だけでなく化学、生化学、材料科学、表面科学などの研究者の協力が必要です。そのため、様々な分野の国内外の大学や研究施設と様々な共同研究を行っています。また、その成果は、上述の分野はもちろん、遺伝子工学や医学、薬学、情報工学など広い分野への波及効果があります。
東京工業大学 工学院 電気電子系
教授 梶川浩太郎